羽生 結弦

f:id:dream3631:20151129075823j:plain【フィギュア】異次元Vの羽生、史上初300点どころか“トリプル世界新



演技の途中、気合に満ちた表情を見せた羽生。世界歴代最高点で優勝した

フィギュアスケートGPシリーズ最終戦 NHK杯第2日(28日、長野市ビッグハット)

 2014年ソチ五輪金メダルの羽生結弦(20)=ANA=が、驚異的な世界最高得点を記録し優勝を飾った。前日の男子ショートプログラム(SP)で106・33点の世界最高得点を出した羽生は、フリーでも4回転ジャンプを3度入れた高難度の構成で216・07点をマークし、世界最高得点を更新。合計で史上初の300点超えとなる322・40点でGPシリーズ通算5勝目を飾り、5年連続出場を決めたGPファイナル(12月10日開幕、バルセロナ)では史上初の3連覇に挑む。

 記録ずくめの得点がコールされると、羽生は両手で顔を覆った。フリー216・07点、合計322・40点。誰も見たことがない数字に会場がどよめいた。「皆さん驚かれたと思うし、自分も驚いている。まだ実感が湧いていない。ちょっとフワフワした感じ」。五輪金メダルに3個の世界最高得点。平安時代陰陽師安倍晴明を演じた男が、平成のフィギュア界で名誉を独り占めした。

 前日はSPで自身の世界最高得点を更新。2位に10・69差をつけ、GP5勝目とファイナル切符は、ほぼ手中にしていた。「(フリー)200点、(合計)300点、ノーミスでいきたいと思うと、自分が緊張しているのが分かった」。だが、ここで安全策を取る男ではない。「やってやろうと思った」と攻め抜いた。

 冒頭からサルコートウループと4回転ジャンプを決めると、ポイントは演技後半最初の連続ジャンプだ。当初は4回転+2回転のトウループだったが、この日午前の練習でも見せていたように2つ目を3回転に変えて成功した。

 「後半の4回転で手をつかずに決められて、3回転もつけたのは達成感がある」。その分、続く連続ジャンプの2つ目を2回転に減らす必要があり、基礎点は変わらない。それでも高難度の4回転コンビネーションを回りきり、2回転トウループでは両手を上げて見栄えをよくした。攻めの姿勢がジャンプ、スピン、ステップのすべてで出来栄え点の加算を引き出した。

 リンクを引き揚げる際、右手でカベを指さした。そこには五輪マークがあった。ビッグハットは1998年長野五輪当時、アイスホッケーの会場だった。

 「あのマークを見て、自分は『絶対王者だ』とプレッシャーをかけました」

 18年平昌(ピョンチャン)五輪開幕まで803日。競技生活の集大成として連覇を狙う金メダリストの誇りが、今回の記録ラッシュを実現した。

 史上初の3連覇がかかるGPファイナルは12月10日に開幕する。「今後は得点のプレッシャーが確実にあって、カベになる。それに打ち勝ち、コントロールできる精神状態にならないといけない」。まさに自分との闘い。ライバルたちを圧倒的に引き離し、羽生が新たな境地に足を踏み入れた。